ニューロパチーの中には免疫系の異常に伴って発症するものがあると考えられているが、感覚性ニューロパチーにおいての知見は少なく、今までに発見されていない感覚神経特異的な自己抗体が発症に関与している可能性があると考えた.本研究は感覚性ニューロパチー患者血清中の抗感覚神経抗体を検索し、発症への関与を検討することであった.予備実験において14例の抗サルファタイド抗体陰性、抗Hu抗体陰性の感覚性ニューロパチー患者血清中、3例に抗神経蛋白抗体を認めたため、これらの検体を用い抗原の同定を試み、また他の症例のスクリーニングを行った.以下にその結果を記す. 1.特異性感覚性ニューロパチー患者血清を用い、培養神経芽細胞腫より抽出した蛋白、を抗原として、ウエスタンブロットを行うも、予備実験で得られた3例以外には特異的なバンドはえられなかった.また、この3症例のうち1症例に、後に悪性腫瘍(リンフォーマ)を認め、当初考えていた特異性感覚性ニューロパチーの範疇からはずれることとなった. 2.市販されている精製ガングリオシドを用いて患者血清中の抗ガングリオシド抗体の検索を試みるも、数例において有為な抗体価の上昇をみたものの、一定の傾向はなく、また高力価に上昇している症例もなかった. 3.ウエスタンブロットで特異的に抗神経抗体のみられた3症例の神経抗原に対するバンドは均一のものでなく、それぞれ異なっていた.また、それらのバンドは免疫染色では同定できるものの、蛋白染色では同定できず、微量蛋白を認識していると思われた.そのため当初予定していたアミノ酸配列の同定は今の所成功していない. 以上の結果を踏まえ、現在患者血清の認識する蛋白精製を試みている。また、リンフォーマの症例も新たな抗体である可能性があり、現在検索中である。今後症例を増やし検討を続けたい。
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