研究概要 |
緒言:細胞内Ca^<2+>放出機構の一つとしてryanodineと特異的に結合するCa^<2+>誘発性Ca^<2+>放出チャンネル(Ca^<2+>-induced Ca^<2+>release:CICR)の存在が中枢神経系でも注目されている.著者らはこれまでに虚血早期より海馬CA1領域においてのみCICR動態に大きな擾乱が生じている可能性を示した^<1,2)>.しかし痙攣重積時の脳内CICR動態についての検討はこれまでに報告されていない.そこで今回我々はbicucclineによる痙攣誘発動物を用い,ryanodine受容体結合量を計測し,痙攣誘発性脳損傷におけるCICR動態について検討する. 方法:実験には体重60-90gの砂ネズミを用いる.脳波を連続記録し,覚醒状態下にbicuccline 0.4-1.0mg/kgをi.v.し,痙攣を誘発する.[^<14>C]iodoantipyrine法により局所血流量(LCBF)を測定する^<3,4)>.(1)脳血流測定用脳切片標本は,そのまま[^<14>C]標準線源とともに1週間感光しオートラジオグラムを作製する.(2)[^3H]-ryanodine binding用脳切片標本は,preincubationの後に15nM[^3H]ryanodineでラベルする.また非特異的結合量の測定のため,15nM[^3H]ryanodineならびに未標識の15nM ryanodineを加えた溶液中でラベルする.その後洗浄・乾燥し,オートラジオグラムを作成する^<5)>.(3)[^3H]-ryanodine総結合量から非特異的結合量を減じて特異的結合量とし,LCBFのデータと共に定量的検討を行う^<1,2)>. 結果:bicucclin i.v.で痙攣は誘発することは可能であるが,多くの動物が痙攣重積により死亡したため,現在も実験を継続中である.また得られたオートラジオグラムの結果は現在検討中である. 考案:痙攣重積により恒久的な脳損傷が惹起されることは従来より知られている.虚血性脳損傷においては細胞内遊離Ca^<2+>濃度の上昇が重要な役割を果たすことが明らかになり,痙攣誘発性脳損傷においても同様の機序が推察されてきた.Mitaniらは海馬における虚血時のCa^<2+>上昇のCa^<2+>源として細胞内成分が重要であることを示した^<6)>.著者らは虚血性脳損傷においてはCICRの擾乱が重要な役割を示していることを示しており^<1,2)>,痙攣誘発性脳損傷においてもCICRが重要な役割を演じているものと考えられた. 文献: 1)野崎博之,他.脳卒中 17:306-314,1995. 2)Nozaki H,et al.Neurochem Res,21:975-982,1996. 3)Sakurada O,et al.Am J Physiol 234:H59-H66,1978. 4)高嶋修太郎,他,自律神経,27:38-45,1990 5)Padua RA,et al.Brain Res 542:135-140,1991. 6)Mitani A,et al.Brain Res 601:103-110,1993.
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