研究概要 |
[目的] パーキンソン病(PD)の成因の一つにミトコンドリア電子伝達系複合体I(complex I)酵素活性の低下が指摘されている。本研究ではcomplex Iのサブユニットの一つである核由来24-kDaサブユニット(24k)の遺伝子多型の有無とPDにおける遺伝子多型の頻度を検討し、危険因子となりうるか明らかにすることを目的とした.またα-Ketoglutarate dehydrogenase complex(KGDHC)のsubunitE2における遺伝子多型についても検討を加えた。 [方法] 明らかにされた塩基配列を基に各エクソンを鋏むプライマーを作成しPCR法にて増幅し直接塩基配列決定を行い遺伝子多型の有無を検討した。また遺伝子多型の頻度に有意差が存在するか(PD126例,コントロール113例),ミスマッチプライマーを用いたRFLP-creating PCRを用いて検討した.subunit E2についても同様に検討した. [結果および考察] シグナルペプチドを構成するエクソン2内にアミノ酸置換(Ala29Val)を伴う遺伝子多型を認めた。PDにおけるその遺伝子多型の頻度はアリルでは有意差を認めなかったが,ゲノタイプの分布に有意差が認められ変異ホモ接合体はコントロール(11.5%)と比較し,PD(23.8%)において有意に高かった(Fisher exact test p<0.01),subunit E2にはアミノ酸置換を伴う変異は認めなかった。 [結論] 認められた遺伝子多型は,その変異置換により蛋白2次構造がα-helixからβ-sheet構造に変化すること,またラット,ウシ,ヒトで保存されている部位であることより機能的に重要なサイトであり,ホモ接合体の危険度はオッズ比2.40(95%CI,1.18-4.88)で,PDの危険因子と成りうると考える.
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