研究概要 |
フローサアイトメトリーにより血小板膜上の発現を調べた結果,欠損者は105人中5人(4.8%)であった.このうち単球でも欠損するtype II欠損はみられなかった. PTCA(経皮的冠動脈形成術)あるいはカテーテルアプレーション施行患者では施行前後でCD36の発現に明らかな差は認められなかった.血小板活性化の指標となる他の血小板膜表面マーカーCD62p・CD63についても明らかな発現の差はみられなかった.フィブリノゲンについては施行後に発現の増加がみられたが,他のマーカーと違い施行前でも発現が多く血液処理過程でのアーチファクトが考えられた.結局CD36を含め血小板膜上の蛋白の発現の変化により活性化の程度を判定する方法は,抗体の種類や採血方法などについてさらに検討する必要がある. 血小板CD36の情報伝達における役割についても検討を行った.EGTAなどで血小板を低カルシウム状態に置くとCD36欠損血小板では各種アゴニストに対する反応性が低下する.特にPMAに対する反応性が異なることからPKCの影響が考えられる.そこでCa^<2+>-ATPaseを阻害することで細胞内Ca^<2+>を増加させるthapsigargin(Tg)を用いて凝集と細胞内Ca^<2+>を調べたところ,TgによるEGTA前処理血小板の細胞内Ca^<2+>増加は二相性となり,その際CD36欠損血小板では初期の反応が長く後続の反応への移行が遅れた。このことからCD36が細胞内Ca^<2+>増加によるPKCの活性化に関与するため,PKCのCa^<2+>動員を抑制する反応が遅れるという可能性が示唆された。 以上より,CD36欠損血小板の反応の低下や遅れは,細胞質内貯蔵Ca^<2+>減少状態を補完する機構がうまく作動せず,特にPKC活性がその影響を受けていると思われた。今後は情報伝達におけるCD36の特徴と,動脈硬化症の発症機転に関与する酸化LDLのレセプターとしての役割との関連も明らかにして行きたい.
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