平成8年度においては心臓における心臓の筋小胞体(SR)の中にあるCa^<2+>結合蛋白であるカルセクエストリン(CS)遺伝子の解析の研究を行った。ウサギSRのCS遺伝子のcDNA制限酵素断片をP^<32>でラベルしたプローブを用いてλファージ・ウサギ・ゲノム・ライブラリーをスクリーニングした結果、6個の異なるポジティブクローンを得た。その中で3個は、制限地図とサザンブロッティングにより解析し、遺伝子内のエクソンの分布を決定した。一方、他の3個のクローンについては、プライマーを用いてエクソン・イントロン境界を明らかにした。又、サブクローニングしたDNA断片の塩基配列をウサギ心筋小胞体CScDNAと比較することで単離された6個の相異なるゲノムDNAクローンがウサギ心筋小胞体CS遺伝子であることを確定することができた。心筋小胞体CS遺伝子のエクソンの分布は、白筋小胞体CS遺伝子のエクソンの分布に近似していた。また、エクソン2、3、4、5、6、7、8、9、10の大きさは、各々87bp、98bp、111bp、74bp、131bp、46bp、55bp、101bp、75bpで白筋小胞体CS遺伝子と同じ大きさであった。本研究は、昨年度日本循環器学会総会において発表した。しかしながら、エクソン1については、本年は見つけることができなかった。ライブラリーについては数種類のものを用いたがだめであった。スクリーニングの効率を上げるために、現在、PCRにより、エクソン1の部分のみを増幅したプローブを作製しスクリーニング中である。今後、心臓のSRのCS遺伝子の5'領域について制限地図とシークエンスによって詳細に解析する。その後、転写開始点を明らかにしコンピューター解析により転写開始点より上流のプロモーターとシス作用エレメントの解析を行い、プロモーターと5'上流域の塩基配列を、白筋小胞体CS遺伝子と比較する。組織特異的な発現を実証するプロモーターと、シスDNAエレメントを同定する。このために、サブクローニングした5'上流域の塩基配列を各種cell lineに導入し、発現ベクターにて機能解析を行う。その後、ゲルシフト分析、ウェスタンブロット、DNAフットプリント法によりDNA結合蛋白質を解析することにより、心筋小胞体CS遺伝子のDNA制御塩基配列を解析する。これらの実験により、5'上流に位置したDNA制御塩基配列が心臓特異的遺伝子の発現制御に関連した核蛋白質に結合するかどうか確かめたい。
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