我々はこれまでKrebs-Henseleit灌流液を用いたLangendorff灌流心にてラットのischemic preconditioningの機序の検討を行ってきた。今回よりin vivoに近い条件と考えられる血液灌流装置を使用して血液灌流による虚血・再灌流障害と、従来より一般的に用いられているKrebs-Henseleit灌流液による虚血・再灌流障害との差異をSDラットを用いて、血行動態およびcreatine kinase (CK)の流出量より比較検討を試みた。 1.ラットLangendorff灌流心(Krebs-Henseleit灌流及び血液灌流)に20分間虚血・30分間再灌流の虚血・再灌流障害を行った(CONT group)。20分間虚血前に5分間虚血・5分間再灌流のischemic preconditioningを行いIP groupとした。 2.Krebs-Hense灌流心では20分間虚血・30分間再灌流によりCONT groupにおいて70%、IP groupでは100%のLVDPの回復がみられた。血液灌流心では20分間虚血・30分間再灌流によりCONT groupにおいて50%、IP groupでは80%のLVDPの回復がみられた。 3.CK値はKrebs-Hense灌流心ではCONT及びIP groupともに増加しなかったが、血液灌流心ではCONT groupにおいて有意な増加を認めた。 4.心筋内高エネルギーリン酸化合物は両灌流心ともIP groupがCONT groupより有意に保持された、Krebs-Hense灌流心の方が血液灌流心よりも改善の程度は大きかった。 5.以上より血液灌流心の方がKrebs-Hense灌流心より虚血・再灌流障害が増強する傾向が認められ、この一因に白血球、接着因子、補体などの存在が示唆された。 6.今後さらにこの原因を検討するとともに、肥大心における血液灌流を行う予定である。
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