研究概要 |
細胞増殖活性を抑制する遺伝子として自殺遺伝子であるシトシンデアミナーゼと細胞周期抑制遺伝子であるCDK(cyclin dependent kinase)の活性部位欠損型(dominant negative)の遺伝子をアデノウイルスの組み換えベクターであるpAdBgl IIプラスミドにプロモーター、ポリA付加シグナルとともに組み込みを行った。さらにアデノウィルスの複製に必要なElA、ElB蛋白コード部位を欠損したウィルスゲノムと上述のpAdBgl IIをホスト細胞である293細胞に遺伝子導入し、相同組み換えしたウィルスのクローン化を行った。動物実験ではラット頸動脈を用いてバルーンカテーテルにより血管内皮損傷を作成し、血管内皮損傷後の再狭窄モデルを作成している。今後、内皮損傷後の血管内腔に組み換えウイルスを用いて遺伝子導入を行う。シトシンデアミナーゼは人体には無害な5-フルオロシトシン(5-FC)を抗癌剤である5-FUに遺伝子導入した細胞でのみ転換することにより局所の細胞増殖抑制活性をもたらすと考えられ、平滑筋の増殖抑制効果を病理学的に検討する予定である。 次年度以降は細胞周期抑制遺伝子であるWAF1,INK4a,INK4b,p27などを用いた組み換えウイルスの作成も検討している。さらにヒトの血管により近いと考えられる高脂血症ウサギの腸骨動脈を用いた研究やウイルスの投与方法や安全性の面での検討もあわせ行う予定である。
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