研究概要 |
Transgenic miceを使って示されたβ2-adrenergic receptor遺伝子を導入した心機能改善の研究を、HVJ-Liposome法を用いて開始した。まず、1)HVJ-Liposome法により導入したβ2-adrenergic receptor遺伝子が正常ラット心臓で有効に発現可能かを検討した。心臓に効率良く遺伝子導入可能なベクターはadenovirusとHVJのみだが、HVJは価値ある特徴を有し応用が期待されている。β2-adrenergic receptor cDNAはDukeのLefkowitz教授らにより供給うけ、Chikin βactin promoter.CMV enhancerをもつ発現vectiorに組み換え、実験に用いている。Ex vivoでは摘出したドナー心臓に心筋保護液を注入後、HVJ-Liosome vectorにて置き換え、冷却心筋保護液中に15分間留置し、再び心筋保護液にてフラッシュし、レシピエントに同種異家移植、3日後の移植心臓を摘出し、Langendolf法による心筋潅流下に各種薬物に対する収縮反応等を検討している。In vivoでは、バルーンカテにて上行大動脈を一時遮断しながら、HVJ-Liposome vectorを冠状動脈に投与した。心機能の検討はex vivoと同様、摘出後に検討する方法と、麻酔下に超音波で測定する方法を併用している。β2-adrenergic receptorの発現は、C末端に対する抗体を用いた免疫組織化学染色で蛋白発現を検討すると同時に、導入遺伝子をプローブとしてNorthern Blotting,in situ hybrydiztionで検討中だがin vivoは予想以上に難航し現在満足な発現レベルに達していない。次に、2)トランスジェニックマウスで示した心機能の改善を成熟後の心筋への一過性の遺伝子導入法でも同様に得られるか現在検討中であるが、うまく進み出した時点でIsoproterenol刺激時のaortic mean pressure.heart rate,LV dp/dt max,摘出心におけるisometric tension等の測定を行う予定である。さらに3)HVJ-Liposome法の利点を生かした反射投与を試み、遺伝子発現と、結果としての心機能改善が長期間に渡って維持出来るかを将来検討予定である。たとえ一過性でも遺伝子導入により心機能の改善の可能性が示されれば難治性心不全の治療に道を開くと思われる。
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