研究実績に概要 これまで、中枢ヒスタミン神経系がけいれんの抑制系として働いており、しかも小児期において、その生理的な意義が高いことを、動物実験や臨床研究で明らかにしてきた。今回はラット扁桃核キンドリングモデルを用いて、抗ヒスタミン作用を持つ薬剤(以下、ヒスタミンH1拮抗薬)がキンドリング進展に与える影響、すなわち、てんかん発症に対して影響を与えるかどうかを検討した。 麻酔下において、ラットに脳定位手術によって、扁桃核に刺激電極を挿入した。およそ1週間後から、1日1回の電流刺激を行うと、当初は脳波上のみのてんかん発作であるが、通常14日前後で全身性のてんかん発作が認められるようになる。この現象(キンドリング)に対して、ヒスタミンH1拮抗薬の効果を検討した。ヒスタミンH1拮抗薬としては、H1受容体に対して選択性の高いピリラミンとケトチフェン、エピナスチンを用いた。 ケトチフェンは、中枢移行性が良いヒスタミンH1拮抗薬であり、抗アレルギー剤として、実際に臨床で用いられている薬剤である。 一方、エピナスチンは、中枢に移行しないヒスタミンH1拮抗薬であり、抗アレルギー剤として、やはり臨床で広く用いられている薬剤である。 ピリラミン、ケトチフェンは、キンドリング完成までの刺激回数を有意にかつ用量依存的に減少させたが、エピナスチンは影響をあたえなかった。このことから、中枢ヒスタミンH1受容体の拮抗が、キンドリングの進展に対して促進的に働くことが示された。 このことから、中枢移行性の良い抗ヒスタミン作用を持つ薬剤は、てんかん発症に対して、促進的に働くことが示された。すなわち、熱性けいれんの既往がある患者など、てんかん原性が高いと思われる場合には、中枢移行性の良い抗ヒスタミン作用を持つ薬剤を避けた方が好ましいと思われた。
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