研究概要 |
ムコ多糖症IVA型はリソソームのN-Acetylgalactosamine-6-sulfate sulfatase(GALNS)の障害による常染色体劣性遺伝性疾患である。これまでに本疾患の分子レベルでの病因を酵素精製、ヒトGALNS遺伝子クローニング、患者遺伝子解析、RFLP解析等を通して行い報告してきた。平成8年度の研究では、世界規模での患者遺伝子解析を発展させると共に、新たな治療法開発の為の疾患モデルマウス作成を目指し、マウスGALNSゲノム遺伝子クローニングを行い、更には遺伝子治療の基礎研究を目標に研究を進めてきた。患者遺伝子解析では、更に症例数を重ねコロンビア人患者とオーストラリア人患者並びにアイルランド人患者、アフガニスタン人患者の解析を行った。本疾患の遺伝子変異は極めて多様性に富み患者間で異なることが一つの特徴であるが、コロンビア人患者においては興味深いことに85%の患者においてG301C変異が存在することが証明された。また、オーストラリア人患者とアイルランド人患者においては双方に共通する重症型のI113F変異、軽症型のT312S変異を患者間に共通の変異として同定した。これらの成果については国際誌2編に投稿中である。 また、マウスGALNSゲノム遺伝子クローニングを並行して行っており、これまでに129SVJマウスゲノム遺伝子ライブラリーのスクリーニングをマウスGALNS cDNAを用いて行い、マウスGALNSゲノムのプロモタ-領域を含むと考えられるゲノム領域から、エクソン7までを含むゲノム遺伝子断片のクローン化を終了した。現在、詳細なマッピングを行いつつあり、更に下流の領域を含む遺伝子断片のスクリーニングを行っている。遺伝子治療の基礎研究ではProf.Tortora,Prof,Bordignonと共同研究を行い、これまでに遺伝子導入によって患者繊維芽細胞での酵素活性の回復が確認された。
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