研究概要 |
小児期腎疾患の病態と、その組織像から予後を決定する因子を明かとすることを目的として、腎生検により得られた組織について病理学的解析に加えて免疫組織染色法および蛍光抗体法による免疫因子についての検討を行った。免疫組織染色についてこれまでにIgG,IgA,C3についての検討を行い、間質病変の変化が予後と強い相関を示すことを報告してきた。間質に炎症が起こるにはいくつかのステップが考えられる。糸球体は固有の免疫細胞としてメサンギウム細胞を持つだけでなく血管内皮というもう一つの免疫に重要な役割を持つ細胞群からなっている。さらにそこにマクロファージなど免疫系細胞の浸潤も見られる。一方で、糸球体病変の程度と予後には必ずしも平行しないとの指摘もあり、腎臓という免疫の場の複雑性が存在するため、解析については多くの努力が払われている。今回の研究においては浸潤してきている炎症細胞の同定、また、メサンギウム細胞、血管内皮細胞および尿細管細胞の免疫学的な役割について炎症のメディエーターとしての接着因子についてさらに検討を加えた。腎生検組織は実験腎炎と異なりその病期の評価が問題となるが、これらの検討によって生検組織がどのような病期をを反映しているのかを発現してきている接着因子の検討により行えないかといった解析を行っている。今後の課題としては、接着因子を介して実際に炎症がシグナルとして伝わっているかといった点、すなわち、シグナルトランスダクションについての検討を加える必要がある。また、これらの情報から、より有効な治療法の選択について検討を行っている。
|