研究概要 |
羊胎仔に対し、高周波アブレーションカテーテルにて完全房室ブロックの作製を試みたが、胎仔心機能を悪化し胎内死亡してしまい完全房室ブロックを作製する事が困難であった。そこで、羊胎仔10頭に対して頻脈性不整脈の際の脳血流の変化について検討した。母体を硬膜外麻酔およびケタラールによる鎮静を行い、腹壁、子宮を切開した。胎仔を露出し、総頚動脈をカットダウンにて確保して、超音波血流計を装着した。次に、右側開胸を行い、上行大動脈基部にやはり超音波血流計を逢着、また、右房に針電極を逢着した。体外式ペースメーカーを用いて、OFF,200,300,350,400/minにて右房をペーシングして、その際の上行大動脈、腕頭動脈の血流量、血流パターンを観察した。 上行大動脈の血流量が、338、300、275、260、250ml/mmin/kgと変化したのに対し、脳血流は53.7±20.9、55.8±16.3、50.8±18.1、48.5±21.3、60.0±18.3ml/min/kgと一定の値を保つことがわかった。これは、胎児心房粗動の際心拍出量が減少しても重要臓器血流である脳血量は合目的に維持されることを示す。ペーシングレートが上がるにつれて腕頭動脈の最高流速は減少し、最低流速が増加する傾向が見られ(心室拡張不全の為)、Pulsatility Indexの低下を認めた。血流量としては維持されても、この血流パターンの変化がどの様に脳機能に影響していくかは今後の課題である。この検討を行うためには、頻拍のまま維持する慢性実験が必要である。 今回の検討では、予定していた完全房室ブロックを作製する事が困難であった。房室結節を焼灼し周りの組織に影響を与えない方法として、高周波アプレーションが最も適していると考えたが、さらに先端の電極が小さく周囲の心筋組織への接触が少ないカテーテルを用いる必要を感じた。
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