研究概要 |
少量の脳脊髄液(100μl)を用いて、神経ペプタイドの1種であるsubstancePの測定法を確立した。測定方法は、二抗体法を用いたradioimunoassayで、測定間変動係数、測定内変動係数は、それぞれ4.4%、7.0%で、測定限界は3fmol/mlであった。substancePは、知覚神経第一次ニューロン終末から放出される痛みを伝える神経伝達物質である。 今回、精神運動発達の正常な1ヶ月から10歳までの小児25名(対象群)と、全身の温痛覚鈍麻を呈する先天性無痛無汗症(遺伝性感覚性ニューロパチーtypeIV)5名の脳脊髄液中のsubstancePを検討した。 対象群の結果は、1カ月未満(N=5,12.73±2.34fmol/ml)、1カ月以上1歳未満(N=8,10.47±3.36fmol/ml)、1歳以上5歳未満(N=5,8.34±1.25fmol/ml)、5歳以上10歳未満(N=7,8.45±0.94fmol/ml)であった。加齢と伴に有意にその値は低下していた(p<0.05)。 先天性無痛無汗症(5名)の脳脊髄液中substancePは、3.05±1.87fmol/mlで年齢をマッチさせて対象群と比較すると有意に低下していた(p<0.01)。 脳脊髄液中の神経ペプチドもカテコールアミンと同様に発達的変動が認められ、各種神経疾患との検討においては、年齢別対象をとる事が必要と考えられた。 先天性無痛無汗症児の脳脊髄液中substancePの低下は、本疾患にみられる知覚神経第一次ニューロンの減少を反映し、無覚鈍麻と関連しているものと思われた。
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