研究概要 |
1.対象検体の採取:平成8年度に肝機能異常を主訴とした乳幼児から材料となる血液(血清、リンパ球)、尿、および肝生検組織検体を採取。採取できた対象試料数は7症例、12検体であった。 2.血清抗体法およびPCR法によるCMV感染およびCMV-DNAの証明:対象者中血清抗体法を用いて感染の有無の検索を実施し、特異的CMV抗体価(IgM,またはIgG)の上昇を示した疾患は2例。またPCR法により血液中CMV感染を証明できた症例は前記CMV抗体上昇症例2例中1例であった。また同時に今回設定した条件下において尿試料からのCMV-DNA検出からも検証し、陽性であることが証明された。 3.CMV感染例における病理組織学像と肝組織中CMV-DNA検出:平成9年1月時点で、CMV感染患児2例より得られた肝組織試料中CMV-DNAについて定性解析を実施し、陽性は1例であった。病理組織学的検討では門脈域の炎症細胞湿潤と肝実質域における多核巨細胞および腫大した肝細胞が観察される、非特異的ウイルス性肝炎像を呈していた。本症例については現在肝組織中のCMV in situ hybridzationを実施中で、CMV-DNAの局在性について検討中である。検討に値する対象総検体数が予想外に少なく、CMV感染の証明および肝生検による肝組織の採取が可能だった例がわずかに1例だった事から、肝組織中のCMV-DNAの証明は可能であったが、CMV-DNAの局在性および導かれる肝障害の発生機序がCMVの直接障害によるものかCMV-DNAの介在しない間接的な機序によるものなのか結論は未だ得られず、今後の検討症例の増加が期待される。
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