研究概要 |
1、覚醒時呼吸障害(繰り返す過呼吸と無呼吸)を伴うRett症候群における脳循環動態・酸素代謝について近赤外分光測定装置を用いて非侵襲的にモニターした。測定は事前に家族の同意の得られた6名について行い、覚醒及び睡眠時の脳内酸化・還元ヘモグロビン(酸化Hb,還元Hb)、チトクロームオキシダーゼ(Cytaa_3)について連続的にモニターし、覚醒時群と睡眠時群の間で比較検討した。 2、全例で過呼吸に一致して酸化Hbと総Hb(酸化Hbと還元Hbの和で脳血液量を意味)の増加かつ還元Hbの低下、無呼吸に一致した酸化Hbと総Hbの低下と還元Hbの増加が観察された。Cytaa_3は殆ど変化しなかった。これらの変化は体動による変化とは明らかに異なっていた。 酸化Hb・還元Hb・総Hb・Cytaa_3の平均値の比較では覚醒時の酸化Hbと総Hbで有意な低下(<0.01,<0.05)、覚醒時の還元Hbで有意な増加(<0.05)が各々観察された。しかし経皮炭酸ガスモニターによるPaCO_2には両群間に有意な変化は観察されなかった。 4、呼吸障害の見られない睡眠時との標準偏差の比較では、覚醒時の酸化Hb・還元Hb・総Hb・Cytaa_3の全てに有意な変動(<0.01,<0.001,<0.05,<0.01)が観察された。 まとめ:近赤外分光測定装置によりRett症候群児で非侵襲的かつ連続的なモニターが可能であった。覚醒時の呼吸障害は脳内酸素濃度の低下や脳血液量の低下を引き起こしている可能性が示唆され、本児の脳障害の一因として注目される。
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