胎児循環において動脈管は下行大動脈とほぼ同じ大きさであり、全心拍出量の60%を、また右室拍出量の90%の血液がここを通り、内臓臓器や下肢に血液を供給すると同時に胎盤への送血の重要なルートです。胎生循環で重要な役割を演じた動脈管も、出生後には無用な長物となる。正常動脈管においては、最終的に結合織に置き換わるが、その過程において中膜平滑筋の増殖及び計画細胞死(Apoptosis)が関与しているのを確認した。実験動物(ブタ)、剖検例(ヒト)において種々の染色にて閉鎖過程における形態の観察、アポプタグin situアポトーシス検出キットにての枯死細胞の確認、同部に対して電子顕微鏡レベルでのapoptotic bodyの確認を行った。動脈管収縮過程において4つのステップを考えると、第1段階として:胎生期にプロスタグランジン等によって動脈管がactiveに拡張し、出生が近ずくにつれ動脈管の酸素に対する収縮反応性が増加する一方プロスタグランジン レベルも増加し動脈管の拡張を保持するといったbiochemicalな成熟。第2段階として:出生後におこる平滑筋の収縮による動脈管の機能的閉鎖。約12時間の機能的には完全に閉鎖していると観察された。第3段階として:さらに反応性の持続とプロスタグランジンの減少等による動脈管収縮の保持。第4段階として:Apoptosis及び繊維化による解剖学的な閉鎖となる。出生約24時間目より7生日までに内膜及び中膜平滑筋部にnick-end-labeling陽性細胞が観察された。2及び3生日で陽性率は最高であった。同部に対して電子顕微鏡にての観察を行ったところアポトーシスの証明となるapoptotic bodyを確認できた。以上より動脈管閉鎖機構においてApoputosisが強く関係していると結論づける。
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