研究概要 |
膜骨格蛋白質についての生化学的研究の進歩と膜機能の定量的測定法の開発により,膜骨格の構造と機能の密接な関わりが明らかになってきた。とりわけ,スペクトリン,4. 1蛋白質及びアクチン等に量的,質的異常を認める赤血球では変形能,膜安定性等の機能が低下しており早期に網内系細胞に捕らえられ,寿命が短縮して溶血性貧血となることが解明されている。本研究ではこれらの膜骨格蛋白質の皮膚(表皮細胞)における機能を解明することを目的として以下の検討を行なった。 培養ヒト表皮細胞を用いた実験においてCaスイッチにより4. 1蛋白質およびフォドリンの細胞質から細胞膜への分布の変化が認められた。さらにフォルボールエステルの添加により同様の分布の移行が認められた。これらの蛋白質の表皮細胞膜間接着への関与が示唆される(Shimizu et al, Biol Cell, 1996)。 我々は、尋常性乾癬表皮細胞において特異的に存在する45kDaの4. 1蛋白質がalternative splicingによる産物である可能性を調べるために、4. 1蛋白質のmRNAをRT-PCR法により解析した。その結果、尋常性乾癬表皮細胞からのRNAを用いたPCR産物に正常表皮細胞においては認められないバンドを確認した。これは乾癬表皮細胞の4. 1蛋白質のsplicingの異常によるものと考えられ、この異常なバンドのシークエンスの解析を現在進めている。この解析により乾癬表皮細胞に特異的にみられる異常蛋白質が膜結合ドメインのどの部分の欠損により生じた蛋白質であるかが判明し、ひいては正常4. 1蛋白質の表皮細胞における機能の解析につながると考えられる。また、皮膚悪性腫瘍である有棘細胞癌、基底細胞上皮腫において4. 1蛋白質の発現の減少が観察された(manuscript under revew)。 さらに、我々は,4. 1蛋白質のみならず表皮細胞にアンキリンが存在することも確認し、報告した(Shimizu et al, Arch Dermatol Res, 1996)。
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