メラノーマは高頻度に血行性転移を起こす癌である。メラノーマの血行性転移のメカニズムを明らかにするためには、メラノーマ自身の細胞間接着分子と血管内皮細胞の細胞間接着分子を同定し、それらの間に相互作用があるかを検討する必要がある。 我々はヒトメラノーマ細胞株、MeWoとA375を用いてメラノーマ細胞が発現している細胞間接着分子を調べた。MeWoとA375のRNAを精製し、それを用いてcDNAを作成した。細胞間接着分子であるカドヘリンは現在までに十数種類同定されており、それらのアミノ酸配列には相同性が認められる。この相同性を利用して、デジェネレートプライマーを作成しこMeWoとA375のcDNAを用いてPCRを行った。PCR産物をTAクローニングベクターに組み込み、塩基配列を決定し、アミノ酸配列を調べた。その結果、既知のカドヘリン以外に、6種類の新しいカドヘリンを同定することができた。ごれらのカドヘリンは様々な細胞株に発現しているものだけでなく、メラノーマの細胞殊に特異的に発現しているカドヘリンもみられた。 マウス血管内皮細胞株(F-2)に発現している細胞間接着分子として、我々はマウスカドヘリン5を同定し、すでにその塩基配列を決定し、機能阻害活性を有するモノクローナル抗体を作成した。しかし、マウスカドヘリン5の機能を阻害するだけでは、血管内皮細胞間接着を完全にブロックすることはできない。我々は他の接着分子の存在を疑い、調べた結果、別の未知のカドヘリン分子を同定した。これら両者のカドヘリン分子が血管内皮細胞同士の接着を担っている可能性が示唆された。
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