研究概要 |
表皮バリア機能の低下に伴うランゲルハンス細胞の変化を解析するために、ヘアレスマウスの背部皮膚にアセトン処置またはテープ・ストリッピング処置を経皮水分蒸散量が10倍になるまで行い、急性表皮バリア機能低下を作製した。また、処置後速やかにラテックスで皮膚を密封することにより水分蒸散を防ぐモデルも作製した。バリア破壊処置後、マウス皮膚を経時的に採取し、細胞浮遊液を調製しバリア機能低下がランゲルハンス細胞におよぼす影響を解析したところ以下の結果を得た。 1.バリア機能低下に伴い、ランゲルハンス細胞表面のMHC class II抗原、B7-2, intercellular adhesion molecule-1の発現が数時間後より有意に上昇した。これらの変化は、mRNAレベルでも同様に認められた。また、バリア破壊後の密封処置により、ランゲルハンス細胞表面のMHC class II抗原、B7-2, intercellular adhesion molecule-1の発現の上昇は抑制された。一方、B7-1の発現には有意な変化はみられなかった。 2.バリア機能低下に伴い、ランゲルハンス細胞内のinterleukin-1βレベルは1時間後より上昇した。バリア破壊後の密封処置は、細胞内のinterleukin-1βレベルの上昇を抑制しなかった。 3.表皮細胞リンパ球混合反応において、バリア機能低下に伴いランゲルハンス細胞の抗原提示能は増強した。 以上より、バリア機能低下処置に伴いランゲルハンス細胞は抗原提示細胞として成熟していくことが示された。表皮バリア機能の低下は、アトピー性皮膚炎、職業性皮膚炎などで認められる。今回の研究で示されたランゲルハンス細胞の活性化がこれらの疾患の病態形成に関与している可能性が強く示唆された。
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