研究概要 |
慢性紫外線照射による皮膚発癌の過程において、癌抑制遺伝子p53の発現或いは変異の経時的変化を検討する目的で今回の実験を行った。 1.慢性紫外線照射に先立ち、単回紫外線照射後のp53発現の経時的変化をマウス皮膚を用いて免疫組織学的に検討した。中波長紫外線(UVB)50mJ/cm^2照射6時間後に表皮基底細胞の46%に野生型p53が発現し、12時間後の67%をピークに以後漸減し、4日後にはベースラインに回復した。照射7日後まで検討したが、変異型p53に対するモノクローナル抗体には染色性を示さなかった。20mJ/cm^2照射でも照射12時間後をピークに同様の経時的変化がみられた。 2.高頻度光発癌を特徴とする色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum;XP)モデルマウス(XPマウス)においても同様の実験を行い比較した。50mJ/cm^2照射、20mJ/cm^2照射のいずれにおいてもp53発現のピークは野生株マウスと同様に照射12時間後で、発現頻度にも大差はみとめらなかった。しかし、発現の持続が長く、7日後でも10〜40%の基底細胞にp53が発現していた。照射7日後まで検討したが、変異型p53の発現はみられなかった。XPマウスではp53遺伝子においても紫外線損傷の修復が障害されており、そのため発現が長く持続した可能性がある。 3.今後さらに慢性照射での経時的変化、及びp21,bax,bc1-2など他の遺伝子の変化も併せて検討し、紫外線発癌の機序を解明するとともに、XPマウスとの比較を行うことにより、DNA損傷が紫外線発癌にどの様に関わるかについても検討する予定である。
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