水疱性類天疱瘡(BP)は自己免疫性水疱性疾患のひとつであるが、未だその発症機序の詳細は不明である。以前より、BPにおいては、BP患者の自己抗体(BP抗体)の基底細胞との結合と、補体の活性化が水疱形成の主たる病因とされてきた。また、近年BP抗原分子であるBPAG1、2が固定され、解析されてきている。しかし、われわれは、健丈者の老人において、基底細胞と結合しうるBP抗体を持っているがBPを発症しない者が少なからず存在していることを見い出し、報告した。BPの発症機序には更なる他の因子が関与している可能性はこの他にも示唆されており、この疾患における水疱形成のトリガーが何であるかについては未だ不明であると言わざるを得ない。今回、われわれは、BP患者の病変部皮膚において、Tリンパ球等の炎症性細胞に由来するサイトカインが水疱形成のトリガーとして働いている可能性を考えた。この仮説を検討する目的で、BPの病初期・極期・完解期の各病期の病変部皮膚における各種サイトカインのmRNAの発現レベルとその動態をRT-PCR法とIn situhybridization法にて検討した。そして他の水疱性皮膚疾患や炎症性水疱との比較を試みた。その結果、病初期においては、IL-1、2、IFN-γなどのTh1優位のサイトカインのmRNAの発現レベルの増加を認めた。病極期においても同じ傾向の結果であった。しかし、他の水疱性皮膚疾患や炎症性水疱との比較ではBPに特異的に発現、推移のみられた特定のサイトカインは見い出せなかった。またそれらの局在に関しては、今回検索しえた症例数も少なく、十分結論を出しうるだけの結果を得ることはできなかった。今後も検索する症例数を増やし、検討する予定である。
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