研究概要 |
放射性核種標識ポリフィリン誘導体(Tc-99m ATN-10)の放射線治療前後における腫瘍集積性をin vivoで検討した。担癌マウスモデル(SCC VII移植CDF1マウス)に対して電子線照射(6MeV,15Gy)を行い、腫瘍組織の変化とTc-99m標識ポリフィリン誘導体の腫瘍集積の変化との対応を、バンマカメラによる腫瘍イメージング、切除腫瘍組織切片を用いたオートラジオグラフィ法により検討し、ポルフィリン誘導体の腫瘍集積変化と腫瘍壊死の関連性を検討した。ガンマカメラでは、照射後3日目には、明らかな腫瘍集積の低減が認められた。オートラジオグラムでは、腫瘍壊死部でのポリフィリン誘導体の分布は少なく、主に腫瘍生存度の高い部分への集積が確認された。次に腫瘍細胞株(マウス白血病細胞P388)を用いて、in vitroでの腫瘍の代謝活性の変化とポルフィリン誘導体の腫瘍細胞への取り込みとの関連について検討するために、種々の代謝阻害剤の影響を検討した。ATP合成を阻害する2,4dinitrophenol,DNAを架橋し、細胞分裂を阻害するmitoxantrone,細胞分裂に際し紡錘糸の作用を抑制するcolchicine,細胞内へのendocytosisを阻害するmonensin、また抗癌作用を有するhydroxyureaについて検討したが、いずれの薬剤もP388とポルフィリン誘導体の結合を阻害し得なかった。しかしながら、incubation温度との関係では、5度では、腫瘍細胞との結合は抑制され、37度では促進された。また、細胞浮遊液中の蛋白濃度が高くなると、細胞との結合が阻害されることが判明した。以上の結果から、ポルフィリン誘導体の腫瘍親和性は、少なくとも細胞代謝との関連はなく、細胞表面上の物質(おそらく蛋白)との親和性によることが示唆された。
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