我々は抗がん剤と40°CのLow Hyperthermiaの相互効果について、まず当教室で継代しているマウスL細胞株を用いて、抗がん剤はBleomycin(BLM)を用いてコロニー形成法によって生存率を調べた。その結果、BLMで処理した直後に40°Cの温熱療法を行うと、BLMを40°Cで処理した時と同様に温熱と抗がん剤の相加的効果を上回る相乗的な殺細胞効果を認め、そのメカニズムとしてはBLMによるDNA鎖のsublethal damageのrepairを40°Cの温熱が阻害することが示唆された。 次にマウスL細胞で蛍光色素法によってアポトーシスの出現頻度について調べた。その結果、BLMによるアポトーシスの誘導は5%以内と少なく、またBLMと40°CのLow Hyperthermiaの併用によってはアポトーシスの誘導の増強が認められないことが明らかとなった。従って、マウスL細胞株におけるBLMとLow Hyperthermiaの併用による殺細胞効果増強にはアポトーシスの関与は少ないと考えられた。 温熱療法と抗がん剤のCisplatinの殺細胞効果増強のメカニズムについてヒト神経膠芽腫細胞でHeat Shock Protein(HSP)について調べた結果、44°Cの温熱療法とCisplatinの同時併用により、HSPの産生が抑制されることが明らかとなった。現在BLMとLow Hyperthermiaの併用によるHSPの産生の変化について検討中である。 今後、放射線とLow Hyperthermiaの相互効果、他の抗がん剤とLow Hyperthermiaの相互効果についてヒトがん細胞を用いて検討する予定である。
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