嚢胞性卵巣腫瘍の性状、特に漿液性であるか粘液性であるかを鑑別するために、magnetic resonance spectroscopy(MRS)を用いた検討を行った。摘出予定である嚢胞性卵巣腫瘍3病巣の1H-MRSの測定を、point resolved spectroscopy(PRESS)法を用いて術前に体外から測定を試みた。繰り返し時間(TR)1500msec、エコー時間(TE)25msec、voxelの大きさは2cm×2cm×2cmとした。しかし、水抑制と脂肪抑制が不十分であり、3病巣とも深部にあったため十分な信号が得られず、ピークを確認できなかった。 次に、手術により摘出された卵巣嚢胞性卵巣腫瘍の内容液を吸引し、PRESS法にて同様な条件で1H-MRSを測定したところ、3病巣中2病巣で明瞭なピークが観察された。このピークがどのような物質に基づくものかは同定できなかった。病理学的にはいずれも粘液性嚢胞腺腫であった。 今回、内容液を用いた検討では明瞭なピークが同定できたことから、今後も卵巣嚢胞性腫瘍内容液の1H-MRS測定を重ねることで、ピークを構成する物質を特定し、漿液性嚢腫と粘液性嚢腫、あるいは良性と悪性の1H-MRSパターンの違いを認識しうる可能性が示唆された。また、ハードウエアの面でも、十分な水抑制と脂肪抑制を行う新たな方法の開発と、体内深部にある病巣の微弱な信号を受診ができるよう体表コイルを改良することで、病巣が体内にある状態でも1H-MRSの測定は可能と考えられた。
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