研究概要 |
1)MRS取得の精度向上について:緩和時間の測定による信号強度の補正とlong TR shortTEによる緩和時間の影響を最小にする方法では、得られた平均値には統計学的な差異を認めなかったが、ばらつきが前者の方が大きく臨床では、後者を用いる方が値のばらつきが小さいと考えられた。また、TRとTEと信号強度とのsimulationから、生体の組織代謝物の緩和時間の範囲では信号損失を1割以内にするためには、TR7000ms以上、TE=20ms以下が妥当と考えられた。以上から、装置の測定限界と測定時間から生体における測定条件はTR=7000ms,TE=18msを選択した。 2)正常者での脳の代謝物濃度の変化と年齢変化:同一対象における脳の部位における濃度の相違については、NAAは頭頂葉で高く前頭葉で低い傾向にあるが差が小さい。Crは小脳でかなり高く前頭葉で低かった。しかし、これらの測定には白質、灰白質の含有率が異なるため白質灰白質それぞれの測定も行った。その結果、NAAの差は0.9mM程度でありCrやChoよりも差が小さかった。また、glutamineが白質では明らかに高値であった。年齢変化では、前頭葉の代謝物の変化が乏しく、基底核では年齢と相関したNAAの低下が認められ、正常な脳の老化を反映するものかもしれない。 3)虚血性疾患や脳腫瘍での代謝物濃度の変化:現在データを蓄積中であるが、虚血性疾患では脳虚血部位でのNAA濃度の低下が示唆されたが、再循環治療によっても直後の上昇はみられなかった。脳腫瘍では、Choの上昇はmeningioma等の一部を除いてglioma等はほとんど正常範囲内の変化であった。
|