研究概要 |
本研究は、照射野内に再出現した腫瘍の性状を検討し、初回治療時の腫瘍との差異を明らかにし、再出現する腫瘍の出現抑制と治療法の改善を試み、最終的治療成績を向上させることを目的とした。放射線や化学療法剤に対して、腫瘍が十分に反応するか否かは、臨床生検材料のpredicitive assayにより、治療開始前に鑑別が可能になりつつある。したがって、放射線療法や化学療法が有効と判定された腫瘍では、再増殖腫瘍の細胞に明らかな変化がなければ、再度同一の治療を強力に行うことにより、制御できる可能性がある。マウスに,放射線照射に感受性の高いSANH腫瘍と、中等度の感受性を持つFSA腫瘍を移植し、腫瘍が8mmに増殖したところでTCD90に相当する45Gyおよび55Gyをそれぞれ照射した。照射後12週間の経過観察後、腫瘍が完治しているマウスのみを用い、SANH、FSA腫瘍を移植した部位に再度同一のSANH腫瘍、あるいは異種のFSA、NFSA腫瘍を移植した。腫瘍が8mmに増殖したところで放射線治療を行い、治療効果を腫瘍の増殖曲線とTCD50により検討した。SANH腫瘍治癒部位に再移植されたSANH、FSA腫瘍は、初回移植された腫瘍に比べて、同一照射線量でも発育遅延が認められたが、両腫瘍で明らかな差異はなく、再増殖腫瘍は腫瘍発育環境が影響している可能性が示唆された。NFSA腫瘍は、初回治療と再移植腫瘍の治療で発育遅延に差異かなく、腫瘍発育環境の影響を受けていなかった。初回移植と再移植腫瘍のTCD50の比較では、SANHおよびFSA腫瘍は約20%線量の増加を認めた。一方、NFSA腫瘍は両者に差異なく、TCD50でも腫瘍発育環境の影響を受けていなかった。腫瘍内macrophageの含有率は、NFSAが80%、SANH60%、FSA25%であったが、再移植腫瘍でも変化を認めなかった。今後も研究を継続して行くが、現在までの所、腫瘍発育環境は再増殖腫瘍に明らかな影響を与えず、再発腫瘍でも初回治療が効果を示した場合、再治療を行うことが有効と考えられた。
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