研究概要 |
1.精神分裂病の基本的な病態病態として、知覚が断片化し、纏まりをもった認知ができなくなるという認知障害があることが臨床的に観察されている。しかしどのような断片化が実際に存在するのか、知覚の断片化とその他の分裂病症状にはどのような関係があるのかは未だ明らかではない。そこでわれわれの研究は、経時的に断片化した刺激図形を統合する機能を調べるための調査を開発し検討し、精神分裂病者におれる異常を調べ、またこの機能異常の脳内機構を研究しようとするものである。 2.開発した検査システムは以下のようなものである。カラーモニター画面上に刺激図形を提示するが、その上から黒色の遮蔽で図形は隠されいてる。その遮蔽に直系30mmの覗き穴をあけて裏側の刺激図形を部分的に見えるようにする。マウスを動かすことにより、被検者はその覗き穴を自由に連続的に画面上で動かすことができる。覗き穴を動かして図形をトレースし、刺激図形の部分を統合することで刺激図形の全体を認知できる。 慢性の精神分裂病者25名、正常対象者14名を対象にこの検査システムを使い、12の刺激図形を順次提示し、各刺激図形の描画による再生、及び6つの図形から正解の刺激図形を選択する再認を行わせた。また患者の症状をSAPS 及びSANSを用いて評価し、再生、再認の成績と症状の関係を調べた。 精神分裂病患者では正常被検者と比較して再生、および再認のしずれの成績も有意に低く、またこの異常は、いずれも陽性の思考障害と正の相関を示した。この結果は、精神分裂病には経時的認知統合機能に障害があることが図形認知のレベルで存在することを示すと考えられる。またこの障害と陽性の思考障害は共通の基盤を有することが示唆された。この結果は第18回日本生物学的精神医学会で発表した。(R.Izawa et al.Temporal disintegration of cognition in schizophrenia.Psychiatry and Clinical Neurosciences,1997;51:s17.)。 3.上記検査と比較するためにさらに覗き穴が自動的に動く検査、覗き穴はない単に刺激図形の再認および再生を行う検査も開発し研究を進めている。今後このような比較検討を行った上で、さらにPETを用いた脳内機構の研究も行っていく予定である。
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