研究概要 |
はじめに)グルタミン酸(Glu)の細胞外濃度調節作用を担うグルタミン酸トランスポーターは既にそのクローニングが行なわれ、その機能が注目されている。なかでも、GLAST(Storck,et al)はその高いKm値(77uM)からGluの異常な上昇時に作動する重要なトランスポーターであると推測され、種々な病態に関与すると思われる。そこで今回我々は、カイニン酸てんかんモデルの海馬におけるGLAST mRNAの発現解析を行なった。 方法)実験には36匹のWistar系雄性ラット(250-300g)を用いた。〈Exp-I)6匹のラットにカイニン酸を20mg/kg腹腔内投与しけいれんを誘発した(I-Sz)。対照群6匹には同量のvehicleを腹腔内投与した(I-C)。投与3時間後、けいれん重積状態下で断頭し両側海馬を摘出した。〈Exp-II〉脳固定術にて24匹のラットに対しKAを右扁桃体に微量注入するためのカニューレを装着した。術後一週間後にKA(0.2M PBS溶解液)を0.5ug注入、同部位からの発作発射とラットが辺縁系発作から二次性全般化を来たす様子を全てにおいて確認した。注入日から一日後(II-D:n=6)、一週間後(II-W:n=6)、一カ月後(II-M:n=6)の発作間歇期にて断頭、両側海馬を摘出した。対照群にはvehicleを同量右扁桃体に注入した(II-C)。guanidine isothiocyanate/cesium chloride遠心法にてtotal RNAを抽出し、nitrocellulose filterにtransterした。GLASTに対するcDNA probe(631bp)を[32P]にて標識、Northern blotを行ない、mRNAを検出した。得られた結果はFUJI BAS 2000を用いて定量化した。 結果)、〈Exp-I〉I-SzにおけるGLAST mRNA発現量はI-Cに比較し有意に増加していた。〈Exp-II〉各群とも上昇傾向を示した。II-W,II-MにおいてGLAST mRNAは有意に増大した。特にII-Wはその増大が顕著であった。 考察)〈Exp-I〉の結果ではGLAST mRNAが急性けいれん活動によって発現増大をみることを示した。〈Exp-II〉の結果は慢性てんかんモデルにおける発現量の増大が単にけいれんに依存したものばかりでなく、てんかん性異常獲得過程に伴う代償性変化としての発現であると考察した。
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