精神分裂病のP300振幅低下と上側頭回容積減少との関係が報告され、本研究でも同部位に注目して解析を行った。対象は初発で未治療の精神分裂病者9名と性・年齢を一致させた健常者9名に事象関連電位の記録と脳の定量的MRI解析を施行した。事象関連電位P300成分(=P3b)の平均値(Pz部位)についてみると、精神分裂病者が10.6±6.1μV、健常者が15.2±8.2μVであり、精神分裂病者が低値であったが有意差は認められなかった。定量的MR1では、左右の上側頭回および、全脳総量積について比較したが精神分裂症者と健常者について有意な差は得られなかった。思考障害との関連が報告されている左上側頭回後半部の容積については精神分裂病者において低値の傾向が認められた(p=0.06)。今回の検討では、上側頭回容積低下とP3b成分について検討を行い、いずれも精神分裂病で低値であったが、有意差は得られなかった。これは今回、未服薬の状態で検査可能な、比較的軽症の精神分裂病者が対象に選ばれたことに起因している可能性も考えられた。今後、対象を増やし、重症例についても、薬物療法により、精神症状の改善がみられた時点で検討するなどの工夫が必要になると思われる。また事象関連電位異常の解剖学的基盤をより詳細に検討するため、64チャンネル程度の多チャンネルでの事象関連電位記録と定量的MRIを組み合わせ、事象関連電位各成分の発生源の検討も行っていきたい。
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