研究概要 |
脳内の限られた細胞内でわずかにしか発現していない遺伝子の機能を調べるため、蛍光化プライマーを用いたRT-PCR法によるmRNA微量定量法と、神経細胞の初代培養を組み合わせた実験系を開発した。出生前の発育に伴う脳アロマターゼmRNAの増加をもたらす分子機構を解析するため、胎生13日(E13)のマウス間脳の神経細胞を用い、アドレナリン受容体作動薬ならびに遮断薬、視床下部に分布すると報告されているペプチド性神経伝達物質がアロマターゼmRNA発現に及ぼす効果を調べて以下の成果を得た。 1)α1作動薬はアロマターゼmRNAを増加させ、α1遮断薬は減少させた。α2、β受容体の作動薬、遮断薬には大きな効果はなかった。 2)サブスタンスP (SP)、コレシストキニン(CCK)、ニューロテンシン(NT)はいずれもアロマターゼmRNAを増加させた。また、PMA投与でも増加が見られたが、dBcAMP,フォルスコリン投与では減少した。 3)α1アドレナリン受容体mRNAのうち、α1B mRNAはE12より検出され、発育とともに増加したが、α1D mRNA量は出生前は非常に低値だった。 以上の実験結果より、E13間脳神経細胞にはα1アドレナリン受容体(α1Bである可能性が高い)およびSP, CCK, NTの受容体を介したアロマターゼ発現調節機構のあることが明らかになった。これらの受容体刺激に伴うCキナーゼ活性化がアロマターゼmRNAの増加をもたらすものと考えられる。一方、cAMPは抑制的なsecond messengerとなり得るが、βアドレナリン受容体を介する経路はこの時期の発現調節には影響しないものと考えられた。
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