既にラットより単離した、高親和性メラトニン受容体グループに属する新規の受容体遺伝子(メラトニン類似受容体遺伝子)について、その組織分布を調べた。ラットの大脳、小脳、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、筋肉、睾丸、卵巣、子宮よりpoly(A)^+RNAを抽出し、メラトニン類似受容体遺伝子断片からDIG標識RNAプローブを合成して化学発光法によるノーザンブロット法を実施した。メラトニン1a受容体、1b受容体のmRNAの分布も調べた。PCR法の条件、プライマーを変え、他の新規受容体遺伝子断片の単離の試みも継続した。メラトニン類似受容体mRNAを検出するには40時間という長時間露光が必要だったが、脳、肺、卵巣、脾臓、肝臓で弱いバンドが検出された。メラトニン1a受容体mRNAは、少量だが全組織で発現していた。メラトニン1b受容体mRNAは腎臓にごく少量発現しているのみであった。従ってメラトニン類似受容体のmRNAは様々な組織に分布しているが、その発現量は少ないと思われる。また、今までメラトニン受容体mRNAの末梢組織での分布は殆ど報告されていないが、この結果からメラトニンは中枢神経系のみでなく広く全身に作用すると思われた。更に別の新規受容体遺伝子を単離するため8本のプライマーを合成し、計15通りの組み合わせでPCR法を施行したが、既述したものの他はまだ見出していない。最近別のグループが、下垂体からメラトニン関連受容体遺伝子を単離したと報告した。研究代表者の単離した遺伝子との一致率は94.9%で、同じ遺伝子である可能性が高いと思われるが、彼らも未だこの受容体のリガンドは見出していない。今後はこの受容体を培養細胞に発現させ、メラトニン以外のリガンドとも結合を調べるほか、RNase protection assay法やイムノブロット法などによってその組織分布を詳細に調べ、メラトニン受容体グループの役割を総合的に理解していく予定である。
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