研究概要 |
【目的】今回われわれは多発外傷や重症合併症という生体への過度の侵襲が加わって搬送された未治療の精神分裂病群、向精神薬を投与されている精神分裂病群および対照群の3群の急性ストレス下の生体反応、特に免疫反応を比較検討するために血清のサイトカインを経時的に測定した。 【対象および方法】多発外傷または重症の身体合併症により北里大学病院救命救急センターに搬送された患者のうち年齢,性別、重症度等が合致した未治療精神分裂病群、治療中の精神分裂病群および対照群の3群を対象とした。3群について経時的に炎症性サイトカインのIL-6およびIL-8、その他顆粒球エラスターゼ、ホスホリパーゼA2、可溶性IL-2受容体、さらに接着因子であるVCAM-1、ICAM-1、ELAM-1を測定した。また同時に全身性炎症性反応症候群(SIRS)の有無、および多臓器機能不全症候群(MODS)への進行を含む臨床症状の変化を詳細に観察した。3群について生体に過度の侵襲が加わった際の免疫反応の変化を比較検討した。 【結果】現在まで対照群は8例、未治療精神分裂病群0例、治療中の精神分裂病群4例についてデータを得ている。分裂病群の症例数が現時点では不十分で統計的な評価は不可能であるが、分裂病群は対照群に比べてIL-6および可溶性IL-2レセプターが高値で経過する一方、対照的に接着因子はあまり上昇しない印象がある。今後も症例数を増やし統計的検討が可能になり次第発表する予定である。
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