Rapid cyclingの原因となる可能性のある抗うつ剤、抗精神薬を用い、睡眠覚醒リズムに対する影響を調べた。 (方法)実験動物として、明期12時間、暗期12時間の明暗周期で、自由節食節水下で飼育されたWistar系雄性ラットを用いた。行動リズムの計測には自由に節食節水が可能な側室を持つ回転かごを用い、その回転数を自動的にカウントし、コンピューターに集積した。ラットを回転かごに充分慣らした後、照明を恒常暗とした。充分安定したフリーラン周期を確認した12週後、無作為に各群に分け飲料水から各薬物を投与した。得られたデータを、ペリオドグラムおよび視察法によって解析し、周期成分の分析を行った。 (結果)炭酸リチウムを投与した群は、フリーラン周期の有為な延長が認められた。クロミプラミンを投与した群は、フリーラン周期の有為な延長が認められた。また、視察法において、活動周期が前後に大きく分かれる現象がみられた。炭酸リチウムとクロミプラミンを同時に投与した群では、フリーラン周期の延長は認められたが、クロミプラミン投与群においてみられた活動周期が前後に大きく分かれる現象は、認められなかった。 (考察)クロミプラミンをはじめとする三環系抗うつ剤は、感情障害の病相周期を短縮させ、Rapid cyclingの形成に関与している可能性が報告されている。また、炭酸リチウムは感情病に継続的に投与することにより、病相の発現を予防するとされる。今回、クロミプラミンを投与した群に認められたフリーラン周期のスプリッティング現象が炭酸リチウムの併用によって認められなかったことは、炭酸リチウムが三環系抗うつ剤による生体リズムの変化を是正するか変化させて、感情病の病相発現を予防し、ひいてはRapid cyclingを防止する可能性が指摘された。
|