研究概要 |
今回はセロトニン系抗うつ薬の概念を広く取り、リチウムの反応性に関して検討した。そして、強迫症状を呈する患者3名(2名は強迫性障害、1名は精神分裂症)に追加投与されたリチウムの効果とm-CPP負荷試験の結果の関連を検討した。上述した3名の患者を対象に、既に投与されている薬物を種類・量とも変えずに3週間維持した上で第1回目のm-CPP負荷試験を行った。すなわち、meta-chlorophenylpiperazine(m-CPP:0.5mg/kg)を午前9時に経口投与し、投与前2回と投与後30分おきに午後1時まで計10回の採血を行い、脳内セロトニン神経系の活動性と相関するとされる血中ホルモン(ACTH,cortisol,prolactin)の測定を行った。その後、リチウム投与を開始し3週間後に第2回目のm-CPP負荷試験を行った。精神症状の評価(今回はY-BOCSを用いた強迫症状の評価)は検査結果を知らない評価者が行った。なお、m-CPP負荷試験に関しては、産業医科大学倫理委員会の承認を得ており、患者には充分な説明の上、書面による同意を得ている。データの検討に際しては、3症例間の比較に加え、以前筆者らが正常者10名を対象としてm-CPP負荷試験を行った際のデータとの比較も行った。リチウムを3週間併用することにより、3名中1名は強迫症状が改善し、2名は不変であった。改善した1名は第1回目のm-CPP負荷試験の特にACTH分泌反応から推定される中枢セロトニン神経系の活動性が最も低く、正常対照群と比較しても低値であった。したがって、m-CPP負荷試験の特にACTH分泌反応によってリチウムの効果が予測される可能性が考えられた。
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