他研究機関より譲渡を受けた甲状腺ホルモンβ1受容体を発現するアデノウイルスを293細胞に感染させることにより大量調製し、これを神経細胞に感染させるための条件設定を行っている。細胞は当初はNeuro-2a細胞を予定していたが、維持の容易さとより複雑な分化能を有する点からまずPC12細胞を選択した。ルシフェラーゼを発現するアデノウイルスでの予備実験ではこれらの細胞にも高率にウイルス感染、遺伝子発現がおきることは既に確かめられている。また甲状腺ホルモン受容体の発現もホルモン結合アッセイによって確認されている。しかし細胞の分化というある程度長期間の感染継続と遺伝子発現を要する今回の研究では、感染ウイルス量の多寡により、細胞毒性が強力に出現してしまうために経時的な細胞の変化を追跡するのが難しかったり、あるいは逆に期待される変化がおきなかったりするなど理想的な実験条件の設定に予定以上の時間を要している。早急に条件設定を終了し、研究計画に記載したように、細胞分化の確認とそれに伴って発現する因子の同定を急ぎたい。 甲状腺ホルモンα1受容体やα2バリアントを発現するアデノウイルスは現在作成中である。
|