研究概要 |
インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)患者での血管障害の指標として、頚動脈及び大腿動脈での動脈硬化度を超音波Bモード法にて内膜中膜複合体の肥厚度として測定し,アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子およびアポE遺伝子との多型性との関連性について検討した.NIDDM患者356名及び高血圧や高脂血症を伴わない健常者235名を対象とし、ACE阻害剤を服用しているものは除いた.動脈硬化の評価は,超音波Bモード法にて行い、頚動脈及び大腿動脈の内膜中膜複合体の肥厚度(intimamedia thickness, IMT)を計測し左右の最大肥厚度の平均値を求めこれをIMTとした。対象者の全血よりプロテナーゼKを使ってDNAを抽出する.ACE遺伝子多型性の検討はRigatらの方法、アポE遺伝子の多型性の検討はHixson & Vernierの方法に従って解析した.すなわち対象者の全血より抽出したDNAより2種のプライマーを用いてPCRにてアポE遺伝子を増幅し、その後Hha Iにて制限酵素処理を行いポリアクリルアミドゲル電気詠動にて分離後得られるフラグメントサイズより遺伝子型を判定した。NIDDM患者ではIMT値は健常者よりどの年齢層においても高値を示した。アポEのE4,ACEのD遺伝子の有無は各々対象者の年齢、空腹時血糖、コレステロール値、血圧において、影響は認められなかったが、頚動脈のIMT値はACE遺伝子のDD型ではII型より、有意に高値を示した(1.2000±0.586mm vs. 0.990±0.364mm)。ところが、アポEのE4遺伝子は頚動脈のIMT値とは関連が認められなかった。一方、大腿動脈のIMT値とはACEアポE遺伝子ともに関連性は認められなかった。以上よりACEのD遺伝子はNIDDM患者の頚動脈壁肥厚の遺伝的危険因子であることが判明した。
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