研究概要 |
偽性低アルドステロン症は、腎尿細管その他のミネラルコルチコイド標的器官における先天的なアルドステロン不応症である。本症の病因として、ナトリウムチャンネルの異常が示唆されているため、本研究ではアミロライド感受性ナトリウムチャンネルα、βおよびγサブユニット遺伝子(α、β、γENaC)の異常の有無について解析を行った。偽性低アルドステロン症患者5例の末梢血よりE-B virus transformed lymphoblast lineを確立し、total RNAおよびゲノムDNAを抽出、PCR法にてα、β、γENaCのエクソン、イントロン接合領域を含んだcDNA断片を増幅し、オートシークエンサーを用いたサイクルシークエンス法にて直接的に塩基配列を同定した。αENaCでは、5例全例でThr^<663>→Ala^<663>の点変異が同定され、2例がホモ接合、3例がヘテロ接合で、健常者おける頻度はホモ接合体31%、ヘテロ接合体64%であった。βENaCでは、症例3でヘテロ接合のAsn^<207>→Asp^<207>とAsn^<257>→Tyr^<257>の点変異が同定され、症例1でPhe^<502>→Tyr^<502>のヘテロ接合の点変異が同定された。また、5例全例でPro^<336>→Tyr^<336>の点変異が同定され、4例がホモ接合、1例がヘテロ接合であった。γENaCでは、症例2でLeu^<34>→Phe^<34>のホモ接合の点変異が、症例3で、Ala^<595>→Ser^<595>のヘテロ接合の点変異が、症例4でMet^<539>→Ile^<539>のヘテロ接合の点変異が同定された。また、5例全例でTyr^<178>→Arg^<178>、Pro^<501>→Ala^<501>、Ser^<614>→Ala^<614n>のホモ接合の点変異が同定された。α,β,γENaCのexon-intron boundary areaには異常を認めなかった。以上より、αENaCに同定された点変異は、健常者にも認められたため、遺伝子多型と考えられた。βENaCのAsn^<207>とAsn^<257>は糖鎖結合部位と仮定されており、同定された点変異のいくつか、あるいはそれらの複合が本症の病因である可能性も示唆された。現在、同定された点変異の正常者における頻度を検討中である。
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