成長ホルモン分泌促進ペプチドの視床下部における作用点:下垂体摘除ラットにおける検討 成長ホルモン分泌促進ペプチド(GHRP)は下垂体と視床下部に作用してGH分泌を促進する。GHRPの視床下部における作用点を明らかにする目的で神経細胞活動の指標となるc-fos遺伝子発現を観察した。GHは視床下部にc-fos遺伝子発現を誘導するので、下垂体摘除ラットについて検討した。 成熟雄ラットに下垂体摘除術を施し、サイロキシン(20μg/kg)とコーチゾン(0.5mg/kg)の補充を行い、10日後に無麻酔の条件下で新しく開発されたGHRP(KP-102)を静脈内投与した。経時的にラットを灌流固定し、視床下部のc-fos mRNAをin situ hybridization(ISH)法によって観察した。隣接切片を用いてGH分泌促進因子(GRF)mRNAとソマトスタチン(SS)mRNAに対するISHを行った。さらに、二重標識ISH法を用いてc-fos遺伝子発現細胞の同定を行った。 KP-102の投与によってc-fos mRNAは視床下部弓状核に限局して発現した。これは30分後に最高となり以降漸減した。c-fos mRNAは弓状核の腹外側部でGRF mRNAの分布と重複したが、腹内側部にも発現した。c-fos mRNAはSS mRNAの分布とは重複しなかった。c-fos mRNAとGRF mRNAに対する二重標識ISHを行った結果、c-fos遺伝子発現細胞の23%がGRF mRNA含有細胞であった。またGRF mRNA含有細胞のうちc-fos遺伝子を発現しているのは20%であった。 KP-102は視床下部弓状核においてGRF産生細胞でもSS産生細胞でもない細胞に作用することが示唆された。このKP-102に反応するGRF産生細胞以外の細胞を同定することが、GHRPの視床下部作用を解明するために重要であると考えられた。
|