未治療多発性骨髄腫患者の骨髄単核球細胞を、MUC1を発現している数腫の異なる腫瘍細胞株で順に刺激し、6例中2例の患者からCTLラインTSとKYを確立した。TSはCD8陽性T細胞が主体で、KYはCD4陽性細胞が主体であった。TSおよびKYは骨髄腫細胞株や乳癌細胞株を幅広く障害したが、NK細胞感受性のK562は障害しなかった。障害された細胞株のHLA-A、B、C、DRlocusのDNA typingでは特定のHLA拘束性は認めず、また抗HLA抗体による障害性の抑制も認めなかった。MUC1トランスフェクタントを用いた細胞障害性実験や抗MUC1抗体による抑制試験により、これらのCTLはHLA非拘束性にMUC1を認識していることが示された。KYの障害性にapoptosisが関与しているかについても検討したが、はっきりとした結果はえられなかった。またヒト大腸癌細胞株CHCY-1にMUC1をトランスフェクトした細胞株を糖鎖合成阻害剤benzyl-a-GalNacで処理すると細胞障害性は増強し、脱糖鎖に、よりCTLエピトープが表出することが示された。またCHCY-1のMUC1トランスフェクタントを糖鎖合成阻害剤処理し、cellular vaccinationとしての有効性を検討した。健常人末梢血リンパ球を本細胞で刺激したところ、CTLラインこそ確立できなかったものの、培養14日目のリンパ球でcold target inhibition assayにてMUC1に対する障害性が検出された。またB7とMUC1を同時に発現している細胞株がvaccineとしてより有効であると考え、各種細胞株をスクリーニングしたところRPM1788が選びだされた。本細胞のvaccineとしての有効性を検討中であり、さらに本細胞にMUC1を遺伝子導入し、MUC1を大量発現させたRPM1788細胞を作製し、免疫遺伝子療法としての有効性を検討する予定である。
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