研究概要 |
急性前骨髄球性白血病(APL)では,疾患特異的な染色体異常であるt(15;17)転座がほとんどの症例に認められ,この結果形成されるPML-RARα遺伝子が,白血病の発症に深く関与していると考えられている.本研究は,非腫瘍性のマウスIL-3依存性細胞株を受容細胞として,PML-RARα遺伝子を強制発現させ,その造腫瘍能,細胞分化に及ぼす作用などを検討することにより,APLの発症機構をより深く解明することを目的としている.現在までの進行状況は以下の通りである. マウスIL-3依存性細胞株として32Dc13細胞を用いた.32D細胞は,培地中のIL-3をG-CSFに置換することにより,顆粒球に分化する性質があるが,本実験で用いる細胞が確かに上記の形質を持っていることを確認した.PML-RARαの発現ベクターであるpCMXPML-RARαと選択マーカーであるpSRαneoとを電気穿孔法により32D細胞にco-transfectionし,G418耐性クローンをいくつか単離した.しかし,単離したすべてのクローンにおいて,PML-RARαの発現はRT-PCR法で確認できず,PML-RARαが32D細胞に対し毒性を持つためtransformantが単離できない可能性が考えられた.そこで,当初の方針を変更し,clontech社のTet-Off systemを用いて,PML-RARαの発現を調節できるようにした系を開発した.この系を用い,PML-RARαの新たな発現ベクターによるtransfectionの実験を開始したところである.現在,PML-RARα導入32D細胞において,PML-RARα誘導前後での細胞の造腫瘍能,分化誘導能,apoptosis耐性能等を解析中である.
|