研究概要 |
レチノイン酸による急性前骨髄球性白血病(APL)の分化誘導療法は,臨床的に今日確立された治療法となっている.しかしながら,症例の蓄積とともにレチノイン酸に耐性を示す症例の存在が問題となっている.この耐性化機構を解析するために,まずレチノイン酸に耐性となったHL-60細胞(HL-60R)を用いて,retinoic acid receptor(RAR)-α遺伝子の全塩基配列を解析した.その結果HL-60R細胞ではRAR-α遺伝子のリガンド結合領域コドン411にC→Tへの点突然変異を認め,RAR-α遺伝子はこの領域でストップコドンを形成し,リガンドの受容体への結合が低下していることが明らかになった.さらに,この細胞ではチトクロームP-450やP-糖蛋白,およびP-糖蛋白をコードするMDR1遺伝子の発現が亢進していることが認められた.したがって,白血病細胞のレチノイン酸耐性化機構は受容体遺伝子の構造的変化のみならず細胞内でのレチノイン酸の代謝異常も関与することが示された.また,臨床的にレチノイン酸耐性となったAPL症例より細胞株(UF-1)を樹立した.このUF-1細胞のPML/RAR-αキメラ遺伝子の塩基配列を解析したが,特に構造的異常を認めなかった.UF-1細胞ではt(15;17)(q21;q21)に加え,add(1)(q44),add(6)(q36),add(7)(q36)の付加的染色体異常を認めたため,これらに存在すると考えられる新たなレチノイン酸耐性関連遺伝子のクローニングを現在施行している。
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