研究概要 |
保存期慢性腎不全患者、慢性透析患者および健常者各10名の末梢血白血球よりRNAを抽出し、competitive RT-PCR法にてVitamin D受容体(VDR)遺伝子発現を検討した。保存期患者8/10例、透析患者7/10例、健常者4/5例でVDR遺伝子の発現が同定されたが、全体にその発現量は少なく群間の差は認められなっかた。また、保存期腎不全患者5例では、calcitoriol 0.25μgの投与を行い、1ヶ月後のVDR遺伝子発現の変化を検討したが有意な変化は認めなかった。末梢血白血球のVDR遺伝子発現の同定には、30サイクル以上のPCRを必要とし、その定量性には問題があった。 次に、透析患者176名(男性95名、女性81名)におけるPCR-RFLP法でのVDR遺伝子多型の検討では、Bsm1により切断されないB alleleと切断されるb alleleとに分けられるが、その分布はBB TYPE6.3%、Bb type21.6%、bb type72.2%とB alleleをもつ症例が少なかった。しかし、その分布は非腎不全症例を対象とした日本人の報告と相違なかった。BB typeで有意に血清Ca、P値の高値を認めたが、VDR遺伝子多型と骨代謝マーカー(intact-PTH,osteocalcin,骨型ALP,酒石酸抵抗性フォスファターゼ)との比較では有意な差を認めなかった。また、intact-PTHが180pg/ml以上の症例群と10未満のlow PTH群比較すると、low PTH群でB alleleの出現頻度が少ない傾向がみられたが、VDR遺伝子多型の頻度には有意差を認めなかった。しかし、日本人ではBB typeが少数であるためそれぞれの多型間での比較が難しい点もあり、今回の結果はVDR遺伝子の腎性骨症への影響を必ずしも否定するものとは言えないと考える。
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