IgA腎症におけるIgA1自己凝集にヒンジ部糖ペプチドが介在する可能性を想定し以下の検討を行った。IgA腎症患者群(n=20)対象群(n=20)の血清よりそれぞれIgA1をjacalin-affinity columnを用いて分離した。患者群と対象群の間で正常血清IgAlに対する各群IgAlの結合性を比較検討した。患者群において25%に結合陽性例がみられ、対象群0%に比較して優位に高い陽性率を示した。陽性患者のうち特に結合性の高い症例を2例選択し以下の結合抑制実験を行った。IgA1-IgA1結合はIgA1により抑制されたが、IgA2、IgGによっては抑制されなかった。IgA1よりトリプシン処理により分離されたnativeヒンジ糖ペプチドを用いると、IgA1-IgA1結合は約70%抑制された。これらの結果はこの結合がIgA1ヒンジ部に特異的なものであることを示唆していた。また、IgA1ヒンジ部糖ペプチドの構成成分(20残基合成ヒンジペプチド、Ga1-Ga1NAc、Ga1、Ga1NAc、シアル酸)を用いると、合成ヒンジペプチドにより約70%と強く抑制され、Ga1-Ga1NAcでは約30%、Ga1、Ga1NAcでは約15%、シアル酸では全く抑制されなかった。これらの結果はIgA1自己凝集がヒンジ部のペプチドと、シアル酸以外の糖を含んだコア部分により介在されている事を示唆した。
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