我々は、両腎臓の実質に嚢胞が多数みられる遺伝的多発性嚢胞腎症(PKD)がゆっくり進行するDBA/2FG-pcy(D2-pcy)において、methylprednisolone投与による治療効果およびtaxol投与による治療効果と副作用が認められたことを報告した。引き続き本年度はまず第一に、taxolと類似の構造を有し副作用の軽減が確認されているtaxotere投与の治療効果を検討した。taxotereは、taxolと同濃度である100μ g/weekあるいは1/2量である50μ g/weekを生後15-16日齢D2-pcyマウスに投与した。100μ g/week taxotera投与群では、投与開始後2週で全例が死亡した。50μ g/week taxotere投与群では、半数が死亡し、残りの生存したマウスの腎/体重比およびSUN値は非投与群と比して差を認めなかった。これらのことは、PKDではtaxotereでも副作用の軽減が認められないことを示唆する。次に、methylprednisoloneとtaxolの併用効果を検討した。methylprednisoloneを飲料水に混和して自由摂取させ1-2mg/kg/day投与しかつtaxolを100μg/week投与したD2-pcy併用投与群では、死亡率はtaxol単独投与群と比して低下した。さらに非投与群に比してSUN値に差は認められなかったが、併用投与群では、体重、腎/体重比、および総コレステロール値が有意に減少した。これらのことは、methylprednisoloneとtaxolの併用投与はtaxolの副作用を軽減しmethylprednisoloneの治療効果を促進することを示す。今後、形態学的検索に加えPCNAあるいはBrdu等を用いた細胞増殖指標とDNA ladder patternの解析あるいはin situ end labeling等による細胞死の指標の検討を要する。
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