研究概要 |
〈目的〉ヒト褐色細胞腫より発見されたadrenomedullin(AM)は、血小板cAMP及び血管平滑筋cAMPの上昇を介して降圧効果を発揮する新しいペプチドであり、構造上強力な血管拡張作用を持つcalcitonin gene-related peptide(CGRP)及びamylinとホモロジーを有することが知られている。近年、AMのmRNAは腎臓にも存在し、AMにはCGRPと同様に糸球体濾過量の増加およびNa利尿作用のあることが報告されている。申請者は、すでにラット腎尿細管基底膜側細胞膜にてAMがcAMPを強力に上昇させたことより、腎尿細管におけるAM受容体の存在優位性を示唆した(Osajima et al.,Life Sci.57,457,1995)。今回、ラット培養腎メサンギウム細胞(MC)においてAM受容体のcharacterizationを行い、さらに免疫組織染色法によるAMの局在性についても検討した。 〈方法〉MCを用いて以下の実験を行った。(1)cAMP産生に及ぼす三者ペプチド(AM,CGRP,amylin)の比較(2)(1)に対するAM受容体拮抗剤,AM[22-52]-NH_2及びCGRP受容体拮抗剤,CGRP[8-37]の抑制効果(3)AMとCGRPの相加的効果の有無(4)免疫組織染色法によるAM局在の有無 〈結果〉(1)AM及びCGRPは10分の反応で濃度依存性にcAMP産生を各々7倍、2倍まで増加させた。EC_<50>濃度はそれぞれ3×10^<-9>M,10^<-7>Mであった。amylinにはcAMP増加作用は認めなかった。(2)AM刺激下cAMP及びCGRP刺激下cAMPに対するAM[22-52]-NH_2のIC_<50>濃度は,それぞれ7×10^<-8>M,5×10^<-8>Mであった。AM刺激下cAMP及びCGRP刺激下cAMPに対するCGRP[8-37]のIC_<50>濃度はともに10^<-6>Mであった。(3)AMとCGRPに相加的効果は認めなかった。(4)MCにおいてAM及CGRPの免疫活性は認めなかった。 〈考察〉培養メサンギウム細胞において、AMはパラクリン的に作用しcAMPを介する機序により腎機能を調節している可能性が示唆された。
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