研究概要 |
【目的】 RDS児のS-TA投与前後に,機能的残気量(FRC),全肺コンプライアス(Crs),気管洗浄液中のSP-A濃度を測定し、これらのRDSの回復過程における推移を検討する. 【方法】 1995年4月から1996年7月まで当院周産母子センター小児科に入院したRDS児を対象とした.FRC,Crs,気管洗浄液中のSP-A,血液ガスをS-TA投与前,投与後経時的に測定した.(1)FRCは窒素洗い流し法を用いた測定装置を用いて測定した.(2)Crs測定にはアイビジョン社製の測定装置を用いた.(3)SP-Aは生食0.25mlにて気管を4回洗浄し,その吸引液を遠心,細成分を取り除き,帝人製のSP-Aハイテスト「テイジン」にて測定した. 【結果】 症例は13例.平均出生週数30.1週,平均体重1293g,S-TA投与までの平均時間は3.5時間.死亡例,経過中慢性肺疾患になった症例は除いた. CrsはS-TA投与後24時間にて有意に増加,その後緩やかに増加し投与後72時間にて再び有意に増加した.FRCは投与後2時間より有意に増加,その後緩やかに増加し72時間にて再度有意に増加した.SP-Aは投与後6時間より有意に増加し,その後も72時間までほぼ直線的に増加し続けた. 【考察】 Crsの最初の変化はS-TA投与によるFRCの劇的改善によるものと考えられた.一方SP-Aは内因性のサーファクタントにしか含まれておらず,内因性のサーファクタントの分泌の指標と成り得る.SP-AはS-TA投与後6時間より増加し続けていることにより,内因性のサーファクタントはS-TA投与後より肺胞内に分泌され始めていると考えられる.S-TA投与後の劇的な改善の後の緩徐なFRC,及びCrsの変化は,SP-Aの増加と平行していることより.内因性サーファクタントの量の増加の結果であることが考えられた.
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