研究概要 |
ヌードマウス可移植性ヒト乳癌細胞株MCF-7(ER-positive)を用いて,17β-Estradiol(E2)またはantiestrogen(TAM)のER,PgR,erbB-2,EGFRに対する影響について検討した.MCF-7をヌードマウス24匹の両側腹部皮下に注入し,同時にE2ペレットも埋没した.5週間後に,(1)Control(E2),(2)E2除去(E2ペレット除去),(3)E2+TAM,(4)E2除去+TAMの4群に分け,4週間後に腫瘍を計測後,腫瘍を摘出した.摘出した腫瘍は一部を凍結保存し,残りを24時間ホルマリンに固定後パラフィン包埋した.各腫瘍についてerbB-2,EGFRの発現および自己リン酸化をウエスタンブロット法で,ER,PgR,erbB-2,EGFRの発現を免疫組織学的に検討した.また,細胞増殖能に関してはMIB1,PCNAの各抗体を用いて免疫組織学的手法で検討した.<結果>腫瘍重量変化はE2除去群,E2+TAM群およびE2除去+TAMでControl群に比べて有意な抗腫瘍効果を示した.ウエスタンブロット法によるerbB-2,EGFRの測定は各群とも腫瘍間のばらつきが大きく,有意差はなかった.免疫組織学的には各群でMCF-7におけるerbB-2,EGFRの発現はみられなかった.免疫組織学的にERはE2除去群で最も発現が強く,Control群で最も弱かった.E2+TAM群ではControl群よりややERの染色性が増し,E2除去+TAM群ではE2除去群よりERの染色性は低下した.PgRの発現はControl群で最も発現が強く,E2除去群ではPgRの発現はほとんどみられなかった.E2+TAM群ではControlよりややPgRの発現は減弱し,E2除去+TAM群ではE2除去群より発現が増強した.細胞増殖能の評価ではMIB1においてE2除去+TAM群で他の3群に比べ発現が低下していた.PCNAでは4群における差はなかった.今後は腫瘍増殖を細胞増殖だけでなく細胞死(apoptosis)も考え評価する実験を行う予定である.
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