研究概要 |
癌の浸潤,転移過程においてmatrix degrading enzymeが重要な役割を演じていることが報告されている.基底膜の主要構成成分であるtype IV collagenを特異的に分解する酵素がtype IV collagenase(IVase)でありmatrix metalloproteinase(MMP)の1つである.この酵素はMT-MMPおよびtissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)により活性を調節されると考えられており,組織MT-MMP,血清TIMP測定と平行して大腸該組織および肝転移組織のIVase活性の測定を行い,この活性が癌の浸潤,転移における役割を検索した.また,IVase活性が大腸癌患者の再発予知,予後規定因子になり得るかについても解析した.その結果,1大腸癌組織IVase活性値は有意に大腸正常粘膜部より高く(p<0.001),また癌組織の壁進達度が進むにつれ上昇した.逆に,肝転移巣の活性は正常肝組織部に比し有意に低かった(p<0.001).2大腸癌組織のIVase活性値の中間値をcut-off valueとする大腸癌手術後再発例のsensitivityは78.5%であった(p<0.01).(3)3多変量解析による解析では,大腸癌手術例はDisease-free survivalにおいてIVase活性値は有意な予後規定因子(p<0.005)であり,SurvivalにおいてもIVase活性値が有意な因子(p<0.05)であった.4RT-PCR法を用いるとMT-MMPのmRNAは大腸癌部に強く発現しており,正常粘膜部に発現はみられなかった.5血清TIMP値と大腸癌の進展度との明らかな相関はみられなかった.【結語】MT-MMPは癌部に強く発現しており,大腸癌組織部のIVase活性測定は大腸癌患者のMT-MMPおよびTIMPについても同様に検索を進行中である.
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