高度侵襲早期のTPNの可否を検討する目的で、胸部食道癌患者23名を術後栄養管理法別に経腸栄養(EN)単独群12名とEN+TPN群11名にrandomizeした。 検討項目は、1.窒素出納、各種栄養指標の推移、2.間接カロリメトリーによるエネルギー代謝動態把握、3.bio-impedanceによる体構成成分の経時的変化、4.大腿動静脈アミノ酸分析、5.動脈中ケトン体比と血中総ケトン体量、6.術後合併症、7.14病日までの保険点数。 その結果、 1.窒素出納は、EN単独群で1相性、EN+TPN群で2相性変動を示したが、正転病日は差がなかった。RTPほかの栄養指標の変動に両群間に差を認めなかったが、EN+TPN群でtriglycerideとGOTの有意な上昇を認めた。 2.安静時のエネルギー消費量は、術後は術前に比しEN群で1.18倍、EN+TPN群で1.32倍まで増加した。また、EN単独群では、7病日まで脂肪の燃焼比率が増加したのに対し、EN+TPN群では5病日以降脂肪燃焼比率の低下と糖利用の増加が認められたが、蛋白燃焼比率に差はなかった。 3.EN+TPN群で7病日に体脂肪の増加を認めた。 4.アミノ酸動員率を算出しglutamine、alanineでみると、両群で差を認めなかった。 5.AKBRは1病日に最低値を示し、以後改善した。総ケトン体量は、1病日以降低値で推移した。 6.術後合併症は両群で差を認めなかった。 7.保険点数は、EN単独群で安価であった。 以上より侵襲早期にTPNを付加しても体脂肪率の蓄積のみで、蛋白代謝上有用性は認められず、早期より腸管を利用可能な症例ではTPNは不要と思われた。
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