研究概要 |
1993年、Nature、Scienceに相次いで、家族性非ポリポ-ジス大腸癌患者にDNAlevelで、CAのくり返し配列の異常が顕著に多いことが報告された。その後、Amsterdam criteriaに合致しないいわゆるsporadic大腸癌患者にも、このCAくり返し配列の異常すなわちMicrosatellite instabilityが十数%あることも判明した。 今回の私の研究では、全く大腸癌家族歴を有さない大腸癌患者の、このMicrosatellite instability(DNA replication error:RER)を調べることにより、1つの可能性としてHNPCC患者の拾い上げに役立つかどうか、またsporadic大腸癌患者ではそのRER陽性の意味づけが、基本的にHNPCCのpathogenesisとは異なるのかどうかを検討した。 【結果】全く大腸癌家族歴を持たない102症例103病変のRERを検討した結果、うち17病変(15.7%)にRER陽性の結果を得た。HNPCCの原因遺伝子の約9割を占めるといわれるhMSH2,hM2H1遺伝子のmutationの検索では、これらの17例のうち1例にのみsomatic mutationを認めるのみで、見逃されたHNPCCのscreeningには、必ずしも寄与していないと考えられた。またそれら17病変の臨床病理学的検討においてもその特徴は、右側発生以外、特にHNPCCに似た所見はなかった。 【まとめ】非家族性大腸癌でRER陽性患者のtumorgenesisはHNPCCのそれとは、その性格を異にすることが結論づけられた。
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